サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

5月レビューキャンペーン

レビューアーランキング
先月(2024年4月)

hontoユーザーレビュー

最近の投稿分から優秀なレビューをご紹介します。本もレビューも読みごたえあり、オススメです!(週1更新)

今週のイチオシレビュー

死の貝

死の貝 - 小林 照幸(著)

発見から100年以上に渡る闘い

評価 4.5 投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る

ちょっとページを開いてみれば目に飛び込んでくる症例の写真、そして寄生虫の生活史。「何だこれは!」と思わずにはいられなかった。日本住血吸虫の名は耳に挟んだことはあったが、人の外見年齢にまで影響が及ぶなどとは、この本を通じてでしか真に受けなかっただろう。

この手の奇想天外な病症は何となく迷信と連携させたくなる力を感じる。本書でも確かに一種の霊験として認知された側面について語られてはいるが、以外にもこの寄生虫に最も近い場所で暮らす農耕従事者からは、原因はともかくとして恐ろしい病気として認識していたことに頭を殴られる思いをした。下手をすれば先人たちを啓蒙の足りない人間として侮って因習村などとネタにしがちな我々であるが、当事者の切実な健康への、生命への希求を、無意識にでも切り捨ててはならないのだと心に刻んだ。

この感染症が発見されて終息に至るまで、長く見積もれば122年もの歳月がかかったという。その間に世代を超えて研究、根絶、治療を続けてきた先人たちの働きが、具体的な数字をもって淡々と描写される。だが、そのスケール感には感服するばかりだ。困難の克服、その記憶の風化を食い止める営みの何と有意義なことか。

人間に失望や不信を感じている人もいるかもしれないが、どうかこの本を読んでみて欲しい。我々が自身に失望・不信を抱く理由も案外、時代のスローガンによって左右される。100年以上に渡るこの闘いの中で、時代のスローガンが変わる瞬間が訪れるが、それでも人が果敢に地方病の根絶に臨んだ、地道な努力の集積と世代のバトンは色褪せない。それが知れる稀有な本だ。

音楽は自由にする

音楽は自由にする - 坂本 龍一(著)

天才肌ではなく芸術肌

評価 4 投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る

2023年に逝去という事で、書店の平台にあったのを切っ掛けに購入、その後『積ん読』を経て、この度読了しました。読み始めるとなんやかんやと一日で一気に読み通してしまいました。章末に文中の註釈の説明があり、当時の世風を懐古出来ました。
 坂本龍一氏と言えば、TV番組では『教授』と称されていて、ピアノで様々な楽曲をちょろちょろっと披露したり、勿論自曲を演奏したり、と凄い人だなぁという印象でした。私自身はYMO世代とは少し許り離れている事もあり、あまりYMOの楽曲は知らず、戦場のメリークリスマスやEnergyFlowのイメージが強いです。
 そんな坂本氏ですが、幼少期から2009年迄の自叙伝を本書で読了し、かなりイメージが変わりました。かなり通俗的なキャラだったり、ある種我が儘っぽい子供的な側面があったり、と人間味を感じました。同時に坂本氏の根底に流れているのは芸術肌だという事も犇々と伝わってきました。それは出版社の職である父方ではなく、帽子の職であった母方の血だと思います。それが音楽の方面で萌芽し、演奏よりも作曲への開花へと進展したのも頷けるものがあります。幼少期に学んだ理論がベースとなって作曲家『坂本龍一』を形成する事になったと思います。
 壮年期・晩年期は同時多発テロといったショッキングな事件を目の当たりにした事による論考を刊行したり、他方では地球環境問題などに関わる等、アーティストだけに留まらない活動を行っていましたが、人は生涯で体験した事柄に種々影響を受ける為、確かになぁと首肯出来ました。

罪深きシリア観光旅行

罪深きシリア観光旅行 - 桐島 滋(著)

自由に旅しにくい国を旅するのは「罪深い」のか?

評価 4 投稿者:flowerofzabon - この投稿者のレビュー一覧を見る

民主化前のミャンマーとか、一昔前の北朝鮮とかにジャーナリストが招待された旅行記と同じような意味で筆者は自らのシリア旅行を「罪深い」と断じている。自由に見回ることはできず、当局からガイドがあてがわれ、現地の人との交流は限られ、結局は権力者の見せたい物を見せられ、プロパガンダに加担させられるだけだ、という側面はたしかにある。それでもなお、当局の意図からはみ出して見えてくるものはあり、それをどこまで引き出せるかが旅行者それぞれの資質や意識の差だろう。筆者は居住していたレバノンなどでシリアから外国に出たり、出ざる負えなかった多くの人に会っており、いわばそうした人の思いを背負ってシリアに赴いている。またロシアとの戦争中のウクライナにも滞在して、戦時下のひりひりした感覚も経験している。そんな筆者は「罪滅ぼし」として本書を執筆したとしている。それは十分果たされているのではないだろうか。
旅行好きのあいだでは戦争前のシリアは本当に評判のいい国だった。人は親切だし、料理はおいしいし、みるべき遺跡はぴか一だし、と。そんな国に戻るまでに私はどう関わるべきか、本書を再読しながら考えてみようと思う。

今週のピックアップ

地底旅行 1

地底旅行 1 - 著者:倉薗 紀彦

小説原作の中でも傑作

評価 4 投稿者:mw - この投稿者のレビュー一覧を見る

リアリティのある19世紀ヨーロッパの世界観。
発刊当初に買って読みましたが、何年経っても鮮明に記憶に残っていました。
猛烈に再読したくなり電子でまとめ買い。
元々画力の高い作家さんですが、なかでも本作は抜群に作画が良いです。

現代の私たちからすると、地底世界のお話はあまりにも荒唐無稽です。
しかし、いやもしかしたらこんな世界があるのかも、といつの間にか引き込まれてしまいます。
風景が美しく、圧倒されます。
夢のような世界なのに、現実的な命にかかわる厳しさもあり、本当に主人公と旅をしているような気分になります。

暗号を解く過程もわくわくゾクゾクしました。
ラテン語に読み替えて…と地味な工程なのに、おもしろく演出されています。
小説の漫画化は、文字や説明の羅列になりがちですが、マンガ作品としてまったく違和感なく読めました。
エドガー・ポーの世界も彷彿とさせます。
レトロなSF作品が好きな方には特におすすめです。

カメラにうつらなかった真実

カメラにうつらなかった真実 - エリザベス・パートリッジ(著),ローレン・タマキ (イラスト),松波佐知子 (訳)

「うつらなかったもの」を考えさせるノンフィクション絵本

評価 4.5 投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る

日米開戦でアメリカ政府は西海岸の日系人たち12万人を「敵性外国人」として強制的に退去させ、収容所に送ったという。
本書は、カリフォルニア州中部マンザナー強制収容所を撮影した3人の写真家の視点から、実情を伝えるノンフィクション絵本だ。
ドロシア・ラングは米政府の命で、日系人の宮武東洋は収容された当事者として、アンセル・アダムスは日系人を「善良な市民」に見せようとして、それぞれシャッターを切った。三者三様の写真を軸に、本文とイラストを加え、写らなかった出来事も含め、日米のはざまに生きた人たちの苦悩の歴史を教えてくれる。
 〈写真にうつっているものがすべて真実とはかぎらない〉という当事者の言葉が、胸を打つ。
うつらなかったもの、簡単には見えないものにこそ歴史の真実がある、そんなことを考えさせる、大部な一冊だ。
ルビ付きで子どもも読めるが、大人こそ読みたい。

庭

- 小手鞠 るい(著)

三部作の中で一番好き

評価 4 投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る

いじめを機に不登校になってしまった真奈。
春休み、祖母が暮らすハワイに行く。
そこでの暮らし、人との関わり、庭の世話、花への興味、自然の偉大さと人間の小ささへの気づきなどを通して、自分本来の姿を取り戻すと共に、さらにひとをゆるし、あるがままを受け入れていく強ささえも備えて、成長していく物語。

ステップファミリーが普通に登場するが、この本では断然、日本のお父さんの存在が良い。
家族の絆は血だけではないと希望を持つことができる。
勿論、血縁もそこに登場するいろいろな人たちの物語があってこその自分であるから、重要ではあるが。

この本は各章がさらに細かく6個の節で構成され、メール文や聞き書きの部分等あって、読みやすい構成になっており、それも今の若い人にはさくっと読めるのではないかと思った。

星空をつくる機械

星空をつくる機械 - 井上 毅(著)

単にプラネタリウムの話だけではなく…

評価 4 投稿者:mrtk - この投稿者のレビュー一覧を見る

明石市立天文科学館の叩き上げの井上館長が、プラネタリウム100年を記念して描いた「星空をつくる機械」の「物語」。

単にプラネタリウムの歴史をたどるだけではなく、天文学の歴史を紐解き、宇宙に魅せられた先人たちの功績を追い、プラネタリウム開発の瞬間を描き、日本での普及の裏で活躍してきた先人たちの物語を紡ぐ、読み応えのある作品です。

それなりのファンでなければ、「あー。ここの科学館にもプラネタリウムあるわ。」と見過ごしてしまいがちなプラネタリウムですけれど、星空をもっと見たい、もっと知りたい、もっと星空に近づけたいと願った様々な人々の「願い」を叶えてくれる、叶えてきた、夢のような機械なんだな、と。

読み終えた後、近くのプラネタリウムに足を運びたくなる、そんな一冊です。

罪を犯した人々を支える

罪を犯した人々を支える - 藤原 正範(著)

犯罪加害者の立場に立った1冊です。

評価 3.5 投稿者:広島の中日ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る

長年、家庭裁判所調査官を務めた著者が、犯罪加害者の立場・視点に立った側から裁判を追っている内容の1冊です。そして、純粋に裁判はどう進むか、犯罪加害者はどう扱われるのかなど、実際の裁判の様子を法学の視点からも客観的に説明しています。
 どうしても犯罪加害者への風当たりは悪いものになる風潮になりますが、長年、家庭裁判所調査官として加害者側に立つお仕事をされて来た著者は、その風潮に対して毅然と疑問を投げ掛けています。「加害者側の気持ちなんて知りたくもない」と突っぱねず、ぜひ一度加害者側の立場も、当書を読んで触れてみていただきたいです。

歴史とは何か

歴史とは何か - E.H.カー(著),清水 幾太郎 (訳)

歴史を見る目を考える

評価 4 投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る

イギリスの著名な歴史家E・Hカーがケンブリッジ大学で連続講義をした講義録を翻訳したもの。歴史を読んだり解釈したり評論するとき歴史とは何かと考えることもあるだろう。
その答えになるかは分からないが考え方のヒントにはなった。歴史を考える哲学講義録と考えた方がいいかもしれない。カーは「歴史とは現在と過去の対話」と述べ自分の置かれた環境や考え方だけに囚われて見てはいけないと。また、新しさに流されてもいけない。常に過去を見る新しい目を持つべきと説いている。

古代ローマの庶民たち

古代ローマの庶民たち - ロバート・クナップ(著),西村 昌洋 (監訳),増永 理考 (訳),山下 孝輔 (訳)

マイナーな史料を活用

評価 4.5 投稿者:マルクス・アウレリウス - この投稿者のレビュー一覧を見る

アルテミドロスやシドンのドロテオス、魔術パピルスや墓碑などマイナーな史料を駆使して古代ローマの庶民の生活を活写しているのは新鮮。大部の書物だが飽きずに読むことができる。煩瑣な注が一切ないのも通読するには素晴らしい。ただし、予備知識のない人には少しハードルが高いかも。文章自体は平易で訳も正確で信頼できる。現代を生きる我々庶民と古代ローマの庶民との心性の共通する部分とかけ離れた部分の両方を感じさせてくれる良書。

×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。